リハビリテーション

必須知識

はじめに

「リハビリテーションとは何ですか?」と聞かれて、即座に答えられない理学療法士・作業療法士・言語聴覚士はいませんか?

「球技って何?」と聞かれて答えられないプロの球技選手や、「弦楽器って何?」と聞かれて答えられないプロの音楽家はいないでしょう。

「リハビリテーションとは何か?」
これは一見、臨床に直接関係のない知識のように思えるかもしれません。
私自身、学生や新人の頃は「『リハビリとは?』なんて必要があるのか? それよりも、明日から現場で使える実践的な知識の方が大事だろ」と思っていました。
しかし、臨床・勉強により経験・知識が増えれば増えるほど、基礎知識の大切さがわかる様になってきました。
基礎知識にこだわればこだわるほど、今までの知識は受け売りの浅い知識だったことに気づくと思います。
もちろん実践的な知識も非常に大切ですが、療法士としては間違いなく必須の知識の一つなので、今一度ここでおさらいしてみましょう。

リハビリテーションとは

リハビリテーションの本来の目的は、**「全人間的復権」**です。

語源はラテン語の re(再び)+ habilis(適する)。 中世から近世のヨーロッパでは、キリスト教の「破門の取り消し」や「名誉の回復」として用いられていました。歴史的には、ジャンヌダルクやガリレオ・ガリレイの名誉の回復(リハビリテーション)などが有名です。

我が国においては、社会の偏見や政策の誤り等によって奪われ、傷つけられた尊厳や権利、人権を、本来あるべき姿に回復することとして捉え、リハビリテーションを「全人間的復権」と表しています。

リハビリテーションを構成する4つの分野とリハ工学

リハビリテーションは4つの分野が存在します。

1. 医学的リハビリテーション

病院や診療所などの医療機関で行われる、理学療法や作業療法・言語聴覚療法などのことです。 医師、看護師、理学療法士(PT)、作業療法士(OT)、言語聴覚士(ST)などの専門職がチームを組んで実施し、心身機能の回復、維持、強化を目的としています。 日常的に「リハビリ」と呼ばれているのは、主にこの分野を指します。

具体例
 本来の姿 : 自分の足でトイレに行ける、痛みを気にせず食事ができる。
 アプローチ: 脳卒中後に運動療法やADL訓練を実施
 ポイント : 動作能力を最大限に引き出し、自立した生活の獲得を目指す

2. 職業リハビリテーション

障害のある人が働きがいのある人間らしい仕事に就き、それを維持できるようにする支援です。 職業指導、職業訓練、職業紹介などが含まれます。日本では「障害者雇用促進法」や「障害者総合支援法」に基づきサービスが提供されています。

具体例
 本来の姿 : 仕事を通じて誰かの役に立ち、対価を得て社会的な居場所がある。
 アプローチ: 片手でのPC入力訓練による事務職への復帰。
        大工の経験を活かし、設計や見積もり担当へ役割をシフトするための再教育。
 ポイント : 単なる就労支援ではなく、人生の「働きがい」を取り戻す。

3. 社会リハビリテーション

これには2つの重要な定義があります。

  • 社会生活力の向上: さまざまな社会状況の中で、自分のニーズを満たし、豊かな社会参加を実現する権利を行使する力を高めるプロセス。
  • 社会環境の再構築: 障害者の発達と権利を確保し、可能性を阻む「社会障壁」があるならば、科学技術をもってそれに挑み、社会そのものを再構築しようとする努力。

具体例
 本来の姿 : 行きたい場所に行き、会いたい人に会い、自分の意志で暮らす
 アプローチ: 
   環境面: お風呂場に手すりを設置し、一人で安心して入浴できる環境を作る。
   制度面: ヘルパーさんと一緒に買い物に行き、自分で献立を選ぶ「当たり前の日常」
        を支える。
 ポイント : 本人の努力だけでなく、「社会の側の不自由」をテクノロジーや制度で解消する。

4. 教育リハビリテーション

障害のある方の能力を向上させ、潜在能力を開発し、自己実現を支援する活動です。 障害児教育、特別支援教育などと近い意味ですが、より幅広く社会教育や生涯教育までを含むのが特徴です。

具体例
 本来の姿 : 自分の可能性を信じ、学びを通じて成長し続ける
 アプローチ: タブレット端末を使い、障害のある子どもがクラスメイトと共に学び、
        意見を発信する。中途障害の方が点字や手話を習得し、再び外の世界との
繋がりを再建する。
ポイント. : 学校教育の枠を超えた、生涯にわたる「自己実現のための学び」も含まれる。

リハビリテーション工学(参加支援工学)

工学的アプローチによる支援全般を指します。 具体的には義肢装具、自助具、コミュニケーション機器、環境制御装置、住宅改造、建築、交通機関のバリアフリーなどの工学的な技術により、本人の可能性を広げる。

具体例
 教育的リハ: 学習を助けるコミュニケーション機器(意思伝達装置)やタブレット端末の活用
 医学的リハ: 義手・義足、車椅子、歩行補助ロボットの開発。
 職業的リハ: 障害があっても仕事ができるようなパソコンの入力装置や、作業用治具の工夫。
 社会的リハ: 自宅で生活しやすくなるための段差解消リフトや、環境制御システム(障害者
       向けスマートホーム)。

おわりに

 多くの日本人は「リハビリテーション=筋力増強訓練などの機能訓練」の事だと理解しています。しかし、リハビリテーションの専門職であるならば、その真の意味をきちんと理解しておく必要があります。(ちょうど「運動神経」や「ショック」という言葉が、一般用語と医療用語で意味が異なるのと同じように、専門知識として正確に捉えておきましょう。)

 また、医療学生などにリハビリテーションを説明する際、「全人間的復権」という言葉だけではなかなか伝わりにくいのが実情です。そのため私は、「本来その人があるべき姿に戻ろうとする過程のこと」と、具体的な例を添えて噛み砕いて説明するようにしています。

 全ての分野に共通しているのは、「失われたものだけに注目するのではなく、残された力を活かし、足りない部分は環境や技術、工夫などで補って、その人本来の輝きを取り戻す」という考え方です。これこそが、リハビリテーションの本質であると言えます。

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